人生につまづいたとき、あなたならだれに相談するだろうか。信頼できるパートナー? 身近な友人? それとも職場の先輩? 膨大にある古今東西の書物に導きを求める人もいるかもしれない。
ただ相手が身近な友人の場合だと、ただの愚痴の掃き溜め場になってしまいがちだ。
「ブロンソンならこう言うね―マニア・カルト一生相談」
みうら じゅん (著), 田口 トモロヲ (著) ごま書房
※現在、筑摩書房から文庫版が出ています
この本は、ザ・ブロンソンズ(サブカルの星、みうらじゅんと田口トモロヲ)の二人が、自分たちが憧れる男の中の男(と勝手に定義している)俳優チャールズ・ブロンソンに(勝手に)なりきって悩みを相談し合うという変わった形式の人生相談本である。
著者たちのキャラクターもあいまって、ただの読み物として読んでも相当面白いのだが、人生相談としてもこの『ブロンソンになりきって答えあう』という形式がかなりの功を奏している。 互いにブロンソンになりきることで、俯瞰的な視線が加わり「世間の体裁にしばられない本音の行動・言動」をおのずと導きだしてしまっている。悩める者は相談する前からもう腹は決まっており、ただ背中を押してほしいだけなのだとはよくいわれる話だが、それをこんなに鮮やかに面白く書いた本はそうはないだろう。
特におかしいのはブロンソンとして熱く答えた後、一拍おいてみうらじゅんが『…と、ブロンソンならきっとこういうね』と弱気風(さすが芸達者!)に付け加えているところ。読んでいる方もそこで『あっそうじゃん、これいってるのそもそもブロンソンじゃないじゃん!』と現実に引き戻され、笑ってしまうのである。